酔いどれオンジの随想録(エセー)

酔いどれオンジの随想録(エセー)

日常系の随想録です。

しつこいギャンブル

久しぶりに、同期入社のAさんにあった。

一緒に仕事をしたのは1年程度で、後は、定期研修と同期会に会うくらいだった。
彼は、40才位まで営業成績も順調で、それなりに昇格もした。

しかし、何があったかは知らんが、突如として、他の部署への移動を望み、それからは、会うことがなくなった。

彼には、強烈な印象を持っている。
初任給が入ったその日、初任給で飲みに行ったかと思えば、初任給以上の飲み歩きをし、飲み屋に、借金をしてきた男なのだ。
さらに、ギャンブルが好きで、特に、競馬、麻雀を好んでいた。
厄介なことに、何でも賭けにしたがる性格で、昼飯、喫茶も、どっちが払うか、コインで決めたがった。

但し、賭けにするかどうかは、相手を見極めたうえなのだ。
彼は、競馬での賭け方が豪快だったが、負けたら、1回で辞める潔さを持っていた。
多くの人は、負けを取り返すために、もう1回、あと1回、とずるずると賭けてしまう。

彼は、いつまでも負けたことを引きずったり、未練を持つこともなかった。
日頃の生活でも、人に迷惑をかけるようなことはしなかった。
ギャンブルで人生を失敗する人も多いようだが、ギャンブル好きとはいえ、彼はそのタイプじゃなかった。
いわゆる、(俺が思う)理想のギャンブラーだった。
久しぶりの再会で、ランチに行くことになった。
お互い、歳を取って胃が小さくなったというのに、彼は、肉を食べたいというので、大阪市内になる、グリルの店に行った。

ステーキ、ハンバーグ、フライ系、シチュー等、種類は豊富だ。
二人ともステーキにしようということになった。
ステーキランチは、2500~3000円程度、ハンバーグランチは、1500円~2000円程度の設定で、比較的低価格な設定だった。

彼が、「コインで、どちらが昼食代払うか決めよう」と言い出した(変わっていない)。
相変わらず、ギャンブル好きなのだろう。
裏か表か、1回勝負で、当てれば、俺の勝ちだと言うので、俺は、「裏だ」と言った。
彼が、コインを投げた。
結果は、なんと、裏で、俺の勝ちが確定した。

その時、彼は、予想外の発言をした。

「悪いな!ハンバーグランチにしてくれや。頼むわ。」
えー!!
俺は、優しく言った。
「それは、あかんで。俺の口は、既にステーキ口になっている。ごめんな。」と。
それでも、彼は、引かなかった。

「まあ、そう言わずに。今日の日替わりランチ(1000円)も美味そうやで。」と語りかけてくる。
彼の、ギャンブルに対する姿勢は、昔とは、大きく変わっていた。
まさか、人生も、ギャンブルで決めてたんと違うやろな?