酔いどれオンジの随想録(エセー)

酔いどれオンジの随想録(エセー)

日常系の随想録です。

五宝菜定食と揚げ足定食

現役時代、営業所会議に出席したときのこと。

終始質問攻めに徹する社員、アピールのキツイ社員、話を聞くだけで沈黙を通す社員、意識を散歩させている睡眠中の社員等、色々なタイプがいて、見ているだけで面白い。
ただ、所長に、対抗姿勢を全面に出しているAくんは、所長とうまくいっていないのだろうかと、ふと心配になった。

Aくんの発言は、質問なのか、所長の粗探しなのか、正直、理解に苦しむ発言が多く、聞いていると揚げ足取りにしか聞こえず、聞き苦しくなってきた。
一度注意してやらないと周りからも浮いた存在になってしまうな、と思った。
Aくんの肩を持つわけではないが、確かに、所長の話は、意味不明な話が多いし、何か足りない。基本的に準備不足なのだと思う。所長にも、後で注意しないと、と思った。

午前の会議がおわり、昼食休憩になったので、所長を誘って、食事に出た。
俺は、唐揚げ定食を注文した。所長は悩んでいた。

「五宝菜定食にしたらどうかな。」
「五宝菜・・・?八宝菜定食じゃないんですか。」
「今日の会議の内容は、五宝菜定食やったで。準備不足で、何かが足らんのや。」
所長は、申し訳なさそうにしながら、八宝菜定食を頼んだ。

午後の会議が始まる前にトイレにいくと、トイレの入り口で、Aくんに会った。
Aくんが、「昼は、なにを食べに行かれましたか。」と聞くので、「揚げ足定食や!」と答えた。
Aくんは、「はあ・・・。」と言って、気まずそうな顔をした。
俺の言いたいことが、すぐに分かったようだった。
直接的な注意をしなくても、ちょっとした一声で、ピンとくるなら、伸びしろのある大丈夫なヤツやな、と思った。