酔いどれオンジの随想録(エセー)

酔いどれオンジの随想録(エセー)

日常系の随想録です。

初めての、廻らないお寿司屋さん

昔、回転寿司以外の寿司屋を知らないと言う部下と賭けをしたことがある。
その部下が担当していた某病院と、当社製品の契約が決まれば、部下を、食事に連れて行ってやるという内容だ。
某病院は、6割の確率で、採用してくれるだろうとは思っていたが、確実に、契約にもっていくためのモチベーションをバックアップするためにも、俺の負けを覚悟で約束した。
予想通り、無事契約となり、部下の希望する寿司屋につれていった。

部下が選んだ寿司屋は、カウンター席だけの店で、落ち着いた店内は、堅苦しくもなく、無理も聞いてくれるプライベート感満載の店だった。

「今日は、好きなもの何でも食べてくれよ。俺の奢りや。」
「ありがとうございます!」

ビールで乾杯した後、俺は、焼酎と、刺身をアテに、飲んでいた。
なぜか、彼は、ビールのあと、何も頼まない。

「こういう寿司屋は初めてで。回転寿司はよく行きますが。食べる順番があるんですよね?」
「味の薄いもんから、濃い順番、と言われているが、気にすることないで。好きなのを頼んだらいい。」

それでも、彼は、考え込んでしまい、注文をしようとしない。

「何を悩んでるねんな。アテを注文しなくても、寿司から握ってもらってもいいねんで。」
「迷いますね!緊張します。」
「どうしても決めれんかったら、取敢えず大将に手でも握って貰うか?」

彼は、緊張が解けたかのように、怒涛の注文攻撃を始めた。
赤身の鮪からはじまり、サヨリ、赤貝、サバをアテに、タラフク飲んだ。
その後、中トロ、ウニ、トロ鮪、イカ、エビを握ってもらい、見事に完食した。

「満足です!ここの寿司は江戸前と言うんですよね?」
「失礼な事言うたらアカン!ここの場所は江戸前でなくて大手前やで。」

彼は、たらふく飲んで、たらふく食べ、上機嫌で帰っていった。
俺も、たらふく勘定を払って、ゲロしそうだった。